神経質礼賛 2102.何となくさみしい
外来に通院して来られる年配の女性。ごく少量の抗うつ剤と抗不安薬を服用し、安定した状態が続いている。御主人と二人暮らし。女性向けのジムで汗を流して他の会員たちと談笑し、ボランティアにも出かけ、楽器も吹いている。とても充実した生活が送れているように見える。夜は眠れているし食欲もあって体重は変化していない。話すテンポも良いし、笑顔を浮かべて話される。しかし、「年齢とともに何となくさみしいと言うか、落ち込むことが多くなりました」と言われる。そしてその原因をいろいろ考えてしまう。「天気が悪くなる前が気分が落ち込みやすいです」「自律神経のせいでしょうか」とも言う。
注意が自分の方に向いて、悪い所探しをされているように思われる。天気が悪いと気分が落ちるのは多かれ少なかれ誰しもある。特に頭痛や腰痛のある人には身体症状が出やすいのは確かである。しかし、天気と結び付けてしまうと、天気予報で天気が崩れると聞くと、気分が落ち込むであろう、体調も悪くなるだろうと予想して、自己暗示にかけてしまうことになる。
年齢とともに体力や気力は低下していく。そして、自分よりも年上の人たちがだんだん亡くなっていき、時には自分より若い人も亡くなっていく。自分もどうなるかと不安になる。これは避けて通れない。そんな中でも不安はそのままにして生の欲望に沿って行動していくことを説く森田療法は有力な対処法だろうと思う。少しでもできたことを素直に喜び、気分はパッとしなくても、ガッカリしないで「まあ、こんなものだ」と受け流すのが良い。結果的に「あるがまま」になっているのである。
« 神経質礼賛 2101.四十九日法要の謎 | トップページ | 神経質礼賛 2103.ぴーなっつ最中 »
コメント