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2023年8月24日 (木)

神経質礼賛 2138.森田療法と薬

 以前、浜松医大や三島森田病院で仕事をしていた時には「薬を使わずに森田療法で治してほしい」と御家族が希望して統合失調症の患者さんを受診させることがしばしばあった。それなりの量の薬が処方されていて、副作用も出ているから、御家族が心配されるのも無理はない。しかし、薬で病気をコントロールしながら、日常生活の質を高めたり就労に結び付けていったりするのに森田療法的アプローチが有効な場合もあるが、薬なしの森田療法だけで治療するのは無理というものである。また、神経症圏内の方であっても、服用している薬を急にやめてしまうと、症状の悪化を招くことがあり、慎重に少しずつ減量していく必要があることが少なくない。

森田先生が不眠や不安症状に対して安易に薬を処方することを戒められたことは今まで何度か御紹介してきた。

 「病といへば」薬といふ事は、古来よりの習慣に捕はれた謬想である。病の治療といふ事には、多くの場合、薬は単に医療の補助とするのみである。服薬を必要としない又は其有害な場合は甚だ多い。(中略)今日「病といへば薬」といふ病人と医者との関係から、多くの患者が徒に無用の薬を吞まされて居るといふ事は、既に心ある人々はよく知って居るべき筈である。総てこんな関係から受くる損害は、患者自身の頭の上に降りかゝつて来るのである。(白揚社:森田正馬全集 第7巻p.203)
例へば不眠を訴へる患者に対して、多くの立派な医者が、之に徒らに、催眠剤を種々撰定して与へる事がある。而かも患者の不眠は、少しも良くはならない。この医者は単に不眠の治療といふ事にのみ捉はれて、其人間全体を見る事を忘れたがためである。其患者の毎日の生活状態を聞きたゞして見ると、豈に計らんや患者は、毎日・熟眠が出来ないといひながら、十二時間以上も臥褥し、五時間・七時間位も睡眠して居るのである。多くの医者は不思議にも、其患者の日常の生活状態や、何時に寝て・何時に起き・其間に如何に睡眠が障害されるか・といふ事を聞きたゞさないで、患者の訴ふるまゝに、不眠と承認して、之に催眠剤を与へるのである。 (森田正馬全集 第7巻 p.401)

   当時は現在のような抗精神病薬や抗うつ薬はなく、耐性がつきやすく依存性が高く多量服薬すると死に至るような睡眠薬・鎮静剤しかなかったのである。もし、当時に今のような薬剤があったとしたらどうだったかろうか。薬の使用は最小限に留めたと思われるが、患者さんによっては薬を使って動きやすくしてから「余の療法」・・・森田療法を行って、治療可能な範囲をさらに広げておられたのではないかと想像する。

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