神経質礼賛 2139.美術館浴
毎日新聞に「まいたび」という旅行の宣伝があって、「個人ではまわりにくい!千葉で人気の個性派4つの美術館めぐり」という日帰りバスツアーの募集をみつけて申し込んだ。朝、8時半頃、東京駅前に集合。見たところ、参加者は70代の人が大多数を占めている感じである。添乗員さんもかなり御年輩である。まず、松戸の①聖徳大学の博物館収蔵名品展を見る。藤田嗣治の絵画があって、他にも作曲家の自筆譜や日本の文豪たちの自筆原稿の展示があった。大学の職員さんたちが「るるぶ」編集のカラフルなパンフレットを配って熱心に宣伝する。少子化のため女子大はどこも学生集めに苦労しているようである。次に市川の②東山魁夷記念館の通常展を見る。緑や青の配色が多い美しい風景画を見ていると心が和む。館内の喫茶で昼食のカレーを食べる。その後は③DIC川村記念美術館でモネ、ルノワール、ピカソなど西洋近代絵画の名品を見る。別棟では現代アートの展示が並んでいたが、一面真っ黒の絵画は疑問に思う。現代音楽にもピアニストが何も弾かずに一定時間座っているだけ、という曲があるが、それと同じことだろうか。ここは個人で訪ねるのは困難な場所にある。一応、直通バスはあるらしい。遊歩道脇にはガラクタを積み重ねたような不思議なオブジェがある。広大な敷地には大きな池もあって白鳥たちが泳いでいた。最後はJR土気(とけ)駅に比較的近い④ホキ美術館。ここはTVの日曜美術館で紹介されたことがある。超細密画を集めているのが特徴だ。写真以上にリアルに感じられる作品が多かった。描かれた人物がすぐそこにいるように見える。建物も非常に個性的。エントランスは強く印象に残るし、中空に浮かぶような部分が目を引く。帰りは少し渋滞もあって東京駅着は午後6時頃だった。異空間旅行を楽しんでくることができた。
近頃、美術館浴という言葉を耳にするようになった。美術館で絵画や彫刻や工芸品などを鑑賞するとリラックス効果・リフレッシュ効果を感じることがある。それを実証実験するような研究も行われているという。慌ただしい日常生活を忘れて、時には美術館浴もいい。
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四分休符先生
まずは、新刊のご出版おめでとうございます。
いずれ購入して読ませていただきたいと思います。
美術館浴、いいですね。
でも、僕はもう先生のようにはいきません。
若いころは、1日に2つや3つ美術館を観てまわっていましたが、中年になった今はもうそんな気力も集中力もありません。
美術鑑賞は、けっこう疲れます。たくさん観すぎると、集中力がもちません。
そんなわけで、このごろはひとつの展覧会をじっくりと、できるだけ時間をかけて鑑賞するようにしています(体力もいるのでスニーカーを履いて行くようにしています。スニーカーを履いて行くと、いくぶん鑑賞が楽になると気がついたのは数年前のことです)。
ちなみに、僕のお気に入り美術館のトップは島根県立美術館です。ここは宍道湖の畔にあり、窓が大きく、開放的な雰囲気がとてもいいです。
僕の地元の兵庫県立美術館は、安藤忠雄氏の設計でとても立派ですが、コンクリート打ちっぱなしの建築が重厚すぎて、とくに寒い季節に訪れると巨大な石の墓場に入って行くような感じがして、どうもいけません。
それよりは、西宮市大谷記念美術館や神戸御影にある香雪美術館といったような、こぢんまりとしているけれど、庭園の美しい、感じのいい美術館が好みです。それから昨年開館した大阪中之島美術館もなかなかいい展覧会をやっています。あと、(これはご存知かもしれませんが)京都の河原町にある何必館は隠れ家的存在で面白いところです。京のまちの雑踏に疲れたときに訪れるとリフレッシュします。
先生も京阪神間に来られた際には、これらのオススメ美術館に是非立ち寄っていただきたいと思います。
ついでに書くと、僕はこれまで多くの展覧会を観てきましたが、私的ベスト1は、2006年に東京都現代美術館で開催された『大竹伸朗 全景』展、2位が2003年に島根県立美術館で開催された『光の狩人 森山大道』展です。それから10年前に長崎県美術館で観たアントニオ・ロペス展や一昨年、岡山県の瀬戸内市立美術館で観た髙島野十郎展も印象的でした。これらの展覧会は遠くまで出かけて鑑賞したので、旅の思い出もあいまって、より印象的なものになっているのかもしれません。
追伸
明日は四国の丸亀に夭逝の天才画家・中園孔二展を、来週は中之島美術館に『民藝 MINGEI』展を観に行って作品のエナジーを浴びてきます。とても楽しみです。
投稿: kunu | 2023年8月29日 (火) 10時01分
kunu 様
コメントいただきありがとうございます。
上野の美術館で開催される大規模な展覧会ですと、人波に揉まれて、人の合間から作品を覗く感じになって、あまり美術館浴にならないかもしれません。仰るようなこじんまりした美術館でゆったりと作品を楽しめるとうれしいですね。
なかなか関西の美術館へは行く機会がないですが、御紹介いただいた庭園があるような小さな美術館にはぜひ行って見たいと思います。
投稿: 四分休符 | 2023年8月29日 (火) 21時27分