神経質礼賛 2160.認知症の薬
「物忘れがひどくなってきたから認知症の薬を出して下さい」という60歳前後の外来患者さんが時々おられる。従来から抗認知症薬と称する薬はあって、アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症のみかけの症状を改善するけれども、根本を治しているわけではないので、進行を遅らせるように見せるだけで、薬をやめたら本来の状態に戻ってしまう。また、この種の薬は易怒・興奮といった認知症周辺症状の悪化を招くことがあり、内科クリニックからそうした患者さんが紹介されてくると、まずその薬を止めてみることになる。
アルツハイマー病・アルツハイマー型認知症では、脳内にアミロイドβという物質が溜まって、そのために神経細胞がいわば「布団蒸し」状態となって死滅して脱落して萎縮が起きていると考えられている。その根本のアミロイドβの蓄積を改善する薬が研究されてきた。そして何度も開発に成功したという話が出ては消えていた。近日中に商品名レケンビ(一般名レカネマブ)という薬が発売予定となっている。勤務先でもメーカーによる説明会があった。ヒト化抗ヒト可溶性アミロイドβ凝集体モノクローナル抗体というものだそうである。しかしながら手軽に使える薬ではない。2週間に1回点滴静注する薬であり、対象となる患者さんはかなり絞られる。脳出血を起こしやすくなるという問題もある。使用できる施設も限定される見込みである。さらに薬価は非常に高くなりそうである。
残念ながら、飲めば手軽に認知症が治る・予防できるというような薬はまだまだである。TVショッピングで宣伝されるような薬やサプリはない。せっせと脳を使って活性化させる他ないようだ。新たな楽器に挑戦するのもよさそうだ。いつもピアノ伴奏してくれている友人はフルートやヴァイオリンも初心者程度の曲は弾ける。私もこっそりピアノを練習して彼の伴奏ができるようにしたいものだ。
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