神経質礼賛 2190.冗談音楽
先週の日曜日、FMの「×(かける)クラシック」という番組をかけたら、いきなり栗コーダーカルテットによるベートーヴェンの交響曲第5番「運命」が流れてきた。以前、TVの「らららクラシック」という番組で紹介されたグループの演奏である。リコーダーの合奏というだけでもかわいらしいのに加えて調子が外れていて力が抜けてしまう。笑うしかないという演奏だ。そう言えば、このグループによるダース・ベーダーのテーマがバラエティ番組のBGMによく使われているなあ、と思って検索してみると、YouTubeで確認できた。重厚な原曲との落差が大きすぎて本当に可笑しい。もしこのグループがショスタコーヴィチの交響曲第5番「革命」の第4楽章を演奏して緊迫感を脱力感に変えてしまったらどういう演奏になるだろうかと想像する。
演奏による冗談ではなく元々の曲がパロディになっているものがある。サン=サーンスの「動物の謝肉祭」はその典型だろう。第4曲「亀」はオッフェンバックの「天国と地獄」の旋律を超スローモーションにしている。第5曲「象」もベルリオーズの「ファウストの劫罰」とメンデルスゾーンの「真夏の夜の夢」を引用。第11曲「ピアニスト」は有名な練習曲をわざと下手に弾くというもので、皮肉たっぷりである。サン=サーンスの存命中は第13曲のチェロの名曲「白鳥」以外は出版されず、仲間内だけで演奏を楽しんでいたようだ。
その名も「音楽の冗談」K.522という弦楽合奏+ホルン2本の構成のモーツァルトの曲がある。医大オーケストラで弾いたことがある。常識的な作曲技法から外れた曲で、ここぞという所で不協和音が鳴り響く。第3楽章にはヴァイオリンのカデンツァまでついていて、だんだん音程が上ずっていく様を描いている。第4楽章の最後は無茶苦茶な和音だ。下手な作曲家と田舎の演奏家を揶揄した作品になっている。たまにはこういった音楽で硬くなった頭と体を和らげるのもいいことかも知れない。
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