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2024年1月 7日 (日)

神経質礼賛 2184.夫婦漫才

 三島森田病院で入院を受け持った大阪在住のAさん(2064話)が昨日また御夫婦で外来受診された。昨年の夏にも一度来られていて、仕事が順調になってきたという話を聞いていた。御本人の言われる「着手恐怖」・・・確認・不完全恐怖のために仕事が遅れがちで上司から注意を受けていたが、最近では期限よりも大分早くに仕上げられるようになってきたそうだ。また、仕事関連の場面で司会を任されて高い評価を受けるようにもなっている。生活の発見会でも学習会の世話役を引き受けて活躍しておられるようである。奥さんも全面的に協力してくれていて、「生活の発見」誌2024年1月号「中高年のひろば」p.93に受診旅行の様子を投稿しておられる。順風満帆のように見えるが、そこは神経質。決して満足せずにより高きを仰ぐ。森田先生が言われた「慾の袋に底がない」(*)である。Aさんの話の6~7割は先輩との軋轢の悩みだった。普段から奥さんが愚痴聞き役に回ってくれているようだ。「僕の言っていることは正論やと思うんですが」。その通り、全く正論ではあるが、正論で押し切ってうまくいくとは限らないのが人間関係の難しいところである。「相手の立場を考えて相手を立てたり、時には引いたりしてバランスを取っていくことも実生活では必要かも知れませんよ」「無理をせずに、だんだんあなたの味方を増やしていくのがよいでしょう」と話す。冗談半分・本気半分で「神経症ネタの夫婦漫才を考えてみたらどうでしょう」と勧める。神経症の症状は本人にしかわからない。はたから見れば、何でそんなことで悩んでいるんだということになる。夫「ああ、困った困った。鍵を閉め忘れたかも知れない、戻って見て来よ」妻「アホな。確認したばかりやないの。気にはなっても先にいきましょ」夫「それでもやっぱり忘れていて泥棒に入られたらどないしよ」妻「ええ加減にしなはれ(ポカ)」といった具合である。生活の発見誌の毎年1月号には発見会川柳が載っている。その夫婦漫才バージョンがあってもいいのではないだろうか。

(*)されば幸福とは、吾人が、あるが上にも其機能を発揮し、慾の袋に底がないといふやうに、飽くを知らざる要求の満足を得んとする向上的努力であって、努力を去って幸福なく、努力即幸福であって、幸福即努力であるといふ事が出来るのである。(白揚社:森田正馬全集 第7巻 p.140)

 

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コメント

Aさん、えらいです。良くなった人の話を聞くのはうれしい。私も確認・不完全恐怖がありました、今も少しありますが、ふりかえると、よくここまで良くなったとつくづく思います。長い期間がかかる仕事(収入の伴うものではないですが)をしていると、長い年月をかけて形成した癖が出て、苦しくなります。ですが、年明けの旅行に出かけたとき、旅行中施鍵やガス栓が気になるなんてことがまったくなくて、しみじみうれしかったです。

コメントいただきありがとうございます。

 強迫症状を御自分の努力で治されたのは
御立派なことだと思います。気にはなっても
後ろ髪を引かれる思いをしながらも振り切っ
て前に進んで行かれればどんどん良くなっ
ていきます。

 気にはなっても後ろ髪を引かれる思いをしながらも振り切って前に進んで行かれれば・・・
いまの私に一番必要なことかもしれません。お医者さんにアドバイスされると、やっぱり思いが強くなります。ありがとうございました。
 理屈で納得することばかりを求めないで、自分の感に従う態度を養えればいいのですが。

 私自身、家を出る時には一度施錠を確認して
から出かけます。一度の確認は意味がありま
すが、それ以上の確認は一時的な「安心感」を
求めるための「はからいごと」に過ぎず、時間を
空費するだけのことです。そして、確認し出した
ら際限なく回数が増えて行き、自縄自縛に陥る
のです。
 「不安なまま前進」することが大切です。

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