神経質礼賛 2200.ジストニア(1)
精神科病院で仕事をしていると、長いこと抗精神病薬を服用している人で、首が傾いていたり体が捻じれたりした状態で生活している人を時々見かける。これはジストニアといわれる症状でなかなか改善させることが難しいものである。眼瞼痙攣や急性の眼球上転、字を書くときに手が震える書痙もジストニアに含まれる。筋肉が異常に緊張した結果、異常な姿勢や異常な運動を起こす状態を言う。治療には抗パーキンソン病薬、筋弛緩剤、局所のボツリヌス毒素注射などの薬物療法、バイオ・フィードバック、自律訓練法などがある。手術療法を行っている脳神経外科もある。
書痙は森田療法の世界では普通神経質の一つとされ、古くは山野井房一郎さん(660話)の治療例がある。山野井さんは対人恐怖と書痙のため仕事ができなくなり、森田先生のところで入院治療を受けた。自分では治ったように思えず、会社を辞めて田舎に帰ろうかと思っていたが、森田先生から背中を押されてビクビクハラハラのまま会社に出てみると、重役の前で思ったことがスラスラ言えて、書痙もだんだんに良くなっていったという。私が浜松医大を卒業して研修医になったばかりの頃、書痙のため入院していた50歳位の男性がいた。非常に生真面目で完全欲が強い人で、森田グループのリーダーをやっていた。少し良くなった位では満足できず、入院期間が長くなっていた。バイオ・フィードバックも並行して行ったが、結果は軽度改善に留まった。その後は書痙を主訴に森田療法を受けるという人にお目にかかったことはなく、この人だけである。最近はピアニストやドラマーなど音楽家のジストニアが話題になることがあるので、次回で述べたい。
« 神経質礼賛 2199.うるう年 | トップページ | 神経質礼賛 2201.ジストニア(2) »
コメント