神経質礼賛 2208.雲外蒼天
掛川城天守閣復元30周年を記念して将棋の藤井聡太八冠揮毫の「雲外蒼天」という書が展示されることとなった。今回の王将戦7番勝負の第6局は掛川で行われる予定だったが、藤井八冠の4連勝で決まってしまったため、代替イベントの際に揮毫された書ということだ。雲を突き抜けた先には青空が広がっている、ということで、努力して苦難を乗り越えればすばらしい世界が広がっているという意味である。藤井八冠は総理大臣顕彰の返礼品の将棋盤の箱にもこの言葉を揮毫しているそうだ。圧倒的な強さで将棋界の頂点に立っている大天才の藤井八冠も普段から絶えず努力を重ねて今があるのだ。藤井八冠については中学2年でプロ棋士となり最多連勝記録を更新した時に記事にしている(1402話)ように、自主性を重んじて長所を引き出していくモンテッソーリ教育を受けている。モンテッソーリ女史はイタリア初の女性医師であり、森田先生は高く評価していた。森田療法とモンテッソーリ教育の共通点を指摘する研究者もいる。
この「雲外蒼天」という言葉の出典はよくわからず、近年になって政財界人や研究者たちが座右の銘として披露されるようになっている。森田の言葉では「努力即幸福」がそれに近いだろう。努力即幸福は単に努力すれば幸福になれる、ということだけではなく、目標に向かって努力する行動・生活の中に幸福があるという深い意味も含んでいる。藤井八冠がひときわ明るく輝いている一方で、必死に努力したのにもかかわらずプロになれずに棋士の一歩手前で年齢制限のために去っていく奨励会員が毎年何人もいる。その努力は無駄にはならない。他の分野でも活躍できる可能性を秘めているし、アマチュアとして将棋を一生楽しんでいくこともできる。そうあってほしいと思う。
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四分休符先生
私が「雲外蒼天」という言葉に出会ったのは高田郁著「みをつくし料理帖」10巻シリーズでした。 「旭日昇天」と「雲外蒼天」が一つのキーワードになっています。
「努力=幸福」ですか...叶わずとも努力を惜しまない姿勢を買いたいと私は思います。
話しはずれているかもしれませんが...鈴木先生が「不安即安心」を後年「不安即不安」と言われた、というのは四分休符先生のブログからの情報でしたでしょうか。
私は今でも「恐怖突入」と同じじゃん。なぁんて思ったりする不行き届き者です。不安は不安として捨て置く。草むしり・掃除と同じ。草むしりになりきる。掃除になりきる。そういう事なのだと思うのですが。
さて「雲外蒼天」と揮毫した藤井聡太氏。若くして、とつい唸ってしまいます。記者会見での応答を観ている限り、彼の謙虚な聡明さが際だってと感ずるのは私だけでしょうか。 きっと素直なのだろうな、と思うのです。
投稿: yukimiya | 2024年3月24日 (日) 15時10分
yukimiya 様
コメントいただきありがとうございます。
藤井さんの今はまさに無敵。旭日昇天の勢いです。
しかし、いつかはスランプに陥ったり、優秀な若手が
現れたりするかもしれません。そんな時、雲外蒼天で
粘りを見せて、暗雲を突き抜けてほしいなと思います。
藤井さんの謙虚で真っ直ぐに将棋と向き合う姿勢を見
ていると、「純な心」という言葉が浮かびます。
不安も次々と湧き出る雲のようなものです。不安が
あろうがなかろうが、必要なことをやっていくだけです。
不安はあってもなくても関係ない、というまさに「不問」
の姿勢が知準先生の「不安は不安でそれっきり」「不
安心即不安心」にはより明確に現れているように思い
ます。
投稿: 四分休符 | 2024年3月25日 (月) 08時15分