神経質礼賛 2268.カナレット展
静岡県立美術館で「カナレットとヴェネツィアの輝き」という展覧会が開催されている。これは見に行きたいと思って前売り券を買ってあった。なかなか行く機会がないまま終了日が近づいてきたのであわてて観に行った。いつも美術館に入る時にパンフレットと展示作品リストをもらってくるのだが、今回の展覧会では作品リストがなかった。どこに置いてあるのかな、とキョロキョロしていたら、係員からQRコードで見て下さいと言われた。ついに紙の展示作品リストがなくなりWEBで見る時代になったのかと驚く。カナレット(1697-1768)はヴェネツィア生まれの画家である。名所を精密に描いた景観画がイギリスなどからの貴族の子弟の旅行者たちに人気を博した。今回の展示ではカナレットだけでなく同時代の画家たちあるいはのちのモネなど印象派の画家たちが描いたヴェネツィアも展示されていて面白かった。やはりカナレットの作品は見ごたえがある。細密に描きこまれた風景とともに人々の生き生きとした動きまで伝わってくる。自分もその場に居合せているような感覚になる。当時の貴族たちが競って買い求め、イギリス王室が最大のコレクターだったというのも理解できる。
展示を見終わったところにビデオコーナーがあって5分間ほどのヴェネツィアの観光映像が流れていた。70代くらいの夫婦が並んで前の席に座って見ていた。「あの時はよく行ったなあ」などと懐かしそうに旅行の思い出話をしているのが微笑ましかった。ヴェネツィアの街には車はなく自転車・バイクも禁止されていて唯一の交通機関はゴンドラである。ひたすら歩くことになり、歳をとってからでは少々大変だろう。でもずっと記憶に残る風景に出会える。この御夫婦も今日は旅の記憶とともにカナレットの画を愉しまれたのだろうと思った。
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