神経質礼賛 2341.不眠の訴え
病院勤務から2ヵ所のクリニック勤務に変わって1か月近く経過し、やっと新しい生活に慣れてきた。起床時刻は今まで5時前だったのが6時となり、少しゆとりができた。入院できる病院と異なり、クリニックでは患者さんの層も比較的軽症の方が多く、神経症圏の方を診ることが増えた。初診時の訴えとしては、不眠・イライラが多いのは同じである。そして、4月で年度替わりということもあってか、新しい部署でパワハラに遭って仕事を休んでいる、という訴えもある。
スッキリ眠れない、何度も目が覚めてしまう、寝ても疲れが取れないことを気にしている人はよほど多いとみえて、TVショッピングやCMでは眠りをよくするサプリや快眠グッズをよく見かける。これらの商品のターゲットは中高年者である。加齢に従い、睡眠時間はだんだん短くなり、60歳位では6時間を切って来る。眠りも浅くなり、尿意を催してトイレに起きる回数もだんだん増える。その分、日中も食後にウトウトしやすくなるのが普通である。果たしてこれを「病気」として「薬物治療」する必要があるのだろうか。呼吸器系疾患・耳鼻科系疾患などの身体疾患が原因の不眠ならばまずその治療が優先される。精神病症状に伴う不眠であれば、その治療薬に加えて睡眠薬を使う必要性もあろうが、神経症性不眠の場合はこれまでも何度も書いてきたように、「眠れないと明日に支障がある」「眠れないと病気になってしまう」「早く呆けるのではないか」といったことを恐れる「不眠恐怖」と言った方がよい。特に日中の活動が少なくゴロゴロしてしまう人、長く昼寝をする人では、夜眠れないのは当たり前である。だから、森田正馬先生のように、その人の生活状況を聞いて、神経症性のものであれば「眠りは与えられただけ取る」・・・眠ろうとする努力をやめるという不問の姿勢が一番の「治療薬」になってくるのである。私もまずは生活状況を確認して一般的な睡眠衛生アドバイスを行い、睡眠薬投与は二の次にしている。
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