神経質礼賛 2342.寝酒は逆効果
不眠を訴える外来患者さんたちの中には寝酒が習慣となっている人がいる。毎日25度焼酎を欠かさず2合飲んでいるという男性。仕事の緊張感から解放されてよく眠れるからと言うが、日本酒換算で1日4合近いこの量は危険である。せめて週1日休肝日を作り、量も少しずつ減らしていきましょう、と毎回話している。女性で夕方からビールをちびちび飲み続け、毎日ロング缶3~4本飲んでしまう人がいる。明るくなって家族との話が弾むしよく眠れていいから、とこの人も理由付け飲酒している。純アルコール量で男性は1日40g以上、女性は20g以上で生活習慣病のリスクが高くなることが近年よく言われている。純アルコール40gは日本酒で言えば1合半、ビールだとロング缶1.5本位、女性の20gだとその半分になるから、すぐにオーバーしてしまう。その分、飲まない日を増やす必要がありそうだ。そして、寝酒の問題点はかなり前に書いている(477話)ので再掲しておこう。
寝酒という言葉があるように、アルコールを飲むとよく眠れるので睡眠薬を飲むよりいい、と思っている方も少なくないだろう。ところが、アルコールは睡眠に悪さをするのである。アルコールを飲んで眠くなるのは、意識レベルに関与する脳幹部の網様賦活系を抑制するためである。一見、寝つきはよくなったように見えて、睡眠の質は悪くなっている。一部の睡眠薬でも似たような問題があるが、レム睡眠が抑制されて、「眠ったような気がしない」「疲れが取れない」という感じになりやすい。それにアルコール濃度が低下してくると中途覚醒してしまい、そこから眠りにくくなる。ウトウト眠っても、それまで抑制されていたレム睡眠が反動で出てきて、「悪夢を見る」「変な夢ばかり見て疲れる」ということになってしまう。また、人間の体温は日中上昇し夜間低下するリズムがあり、夜は眠りやすくなっているのだが、アルコールのカロリーは体温上昇に使われるので、睡眠リズムがおかしくなる一因となりうる。それに、休肝日なしに飲酒していたら、体の負担も出るので、特に朝は元気が出ない、ということになるはずである。
睡眠の問題だけではない。飲酒している時は抑制が取れて元気になったような気がしてしまうのだが、その後に反動の落ち込みが出るし、翌日の体調を悪くするから、過度の飲酒はうつ状態の一因にもなるとも言える。適量に留めて連日飲まないのが一番である。
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四分休符先生
ぼくは寝酒はしませんが、毎日晩酌をしてしまいます。
発泡酒350㎖1本か2本と、むかしに比べたら量は少なくなりましたが、休肝日をつくることがなかなかできません。
睡眠の質のこと、それから、抑制が取れて元気になり、翌日、反動で落ち込み、体調が悪化する——ということも何度も経験しました。
先生のおっしゃる通りです。でも、しかし、けれど……。
「わかっちゃいるけど、やめられない」。これです。
これが、大きな問題であります。いやはや……(涙)
投稿: kunu | 2025年5月 4日 (日) 22時18分
kunu 様
コメントいただきありがとうございます。
発泡酒350ml2缶だと純アルコール量
35gで基準はクリアできていますね。
できれば週1回休肝日を作られるとさらに
よろしいかと思います。
私も若い頃に比べて酒量は減り、1回に
日本酒換算2合以内、週に4日までと決め
ています。元来、無口な人間なので、食事
時に妻から「お通夜みたい」とよく言われま
す。晩酌すると「それが普通」なのだそうで
その点は晩酌の効用かもしれません(笑)。
健康的にお酒を楽しみたいですね。
投稿: 四分休符 | 2025年5月 5日 (月) 08時08分
子供の頃みていた時代劇の感化で酒をうまさうに大量に呑むことに憧れましたが、美味いとも思えず、強くもなりませんでした。句会の後の反省会(飲み会)に付き合いますが、帰路は貧血と便意の恐怖です。牛乳やジュースなら1リットル平気で飲みます🙌
投稿: たらふく | 2025年5月11日 (日) 06時55分
たらふく 様
コメントいただきありがとうございます。
私も友人宅で2時間ほどぶっ続けで合奏した後、
飲むのですが、帰りのバスでトイレが心配になる
ので、ほどほどに切り上げています。
冷たいビールを「プハー」と美味しそうに飲む人
が羨ましく感じますが、それをやると腹が「下り超
特急」になってしまうので避けています(笑)。
投稿: 四分休符 | 2025年5月11日 (日) 07時36分