神経質礼賛 2351.若者に増えている電話恐怖症
あまり電話恐怖という人にお目にかかったことがない。前勤務先の病院の外来患者さんに一人だけいた。夫が自営業をしていて、お客さんから電話がかかってきたり、時には電話をかけなければならなかったりすると激しく緊張して動悸がして困るということで受診された。対人恐怖(社交不安症)の一種と考えてよい。私自身、電話恐怖(1669話)の経験があるからとてもよく理解できる。誰でも仕事の電話を受けたりかけたりする時には緊張するものであるから、仕方なしにやっていけばよい、と伝え、本人の希望で薬物療法(エスシタロプラム10㎎を1日1錠投与)を行った。日常生活には支障をきたさなくなり、通院間隔は1カ月から2カ月、3カ月に一度となっていった。
ところが、最近のネット記事(東洋経済ONLINE)によると若者の間で電話恐怖症が増えているという。固定電話がある職場に働く20歳以上の男女562人を対象とした2023年の調査では職場での電話対応に苦手意識のある人は全世代で57.8%、特に20代は75%だったという。着信音が鳴った瞬間、心拍数が一気に上がり、電話が終わると全身の力が抜けてため息が出る、営業なのに電話でアポが取れない、などという話もあるようだ。メールやSNSに慣れた若者では固定電話への苦手意識が出やすいのだろう。電話だと、待ったなしでの対応が求められるし、相手の状況が見えない中で会話しなくてはならないから、失言したらどうしよう、などと心配しやすい。今では電話代行サービスがあったり、AIによる電話の会話分析(話すテンポ、ラリー回数、沈黙回数などを分析する)サービスがあったりするらしい。
結局は「慣れ」なのだと思う。緊張しながらも仕方なしに電話を取る。そして、嫌々ながら電話を掛ける。オドオド・ハラハラしながらも話が伝わればそれでよし。緊張したかどうかを問題にしないことだ。それを繰り返していくうちに苦手意識は自然と薄らいでいくものである。
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