神経質礼賛 2352.五つの物品(長谷川式スケール)
病院の常勤医時代とは異なり、クリニックには自分のデスクがなく資料や物を置いておけるスペースがないので、必要な物はすべてカバンに入れて持ち歩くことになる。患者さんに病気の説明を行うパンフレットや自宅のプリンターで印刷した患者さんに渡す資料も持ち歩く。たまに高齢の方で認知症の疑いがある方がいて、長谷川式スケール(831話)を行いたいと思うことがある(前回記事に書いた当時は保険点数が取れなかったが、現在は保険点数が取れるようになっている)。クリニックには用紙がないので、家で10枚ほど印刷した。質問の中には五つの物品を見せてから隠し、何があったか答えてもらうというものがある。今まで勤務した病院には製薬会社が作った五つの物品セットがあって重宝していた。クリニックでは見当たらないので、自分で用意して小さなポーチに入れ、これも通勤カバンの常備品となった。五つの物品はなるべくお互いに関連のない物である必要がある。私が用意したものは腕時計、小さなハサミ、鍵、単4乾電池、五円玉である。ハサミは実際に使えるし、電池はペンライトの予備電池になるので一石二鳥である。
長谷川式スケールは認知症研究の大家だった長谷川和夫先生(1929-2021)が開発され、日本では広く活用されている。30点満点で20点以下は認知症の疑い、実臨床では10点を切って来ると家庭での対応が困難となり、施設入所も考える必要性が出てくる。介護の仕事をされている方々や御家族にもわかりやすいものだ。長谷川先生は晩年に御自身が認知症になられたことを公表して話題になった。あまり知られていないが長谷川先生は森田療法の入門書も書かれている。慈恵医大御出身で聖マリアンナ医大教授から学長になられているから森田療法についての造詣も深かった。30年以上前に出版されたごま書房『森田療法入門』は漫画も入ってとてもわかりやすい本で、私の本棚にはだいぶ茶色く変色した状態で収まっている。
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