神経質礼賛 2387.柚木沙弥郎展
静岡市立美術館で開催されている「柚木沙弥郎(ゆのきさみろう) 永遠のいま」という展覧会を見に行ってきた。柚木さんは静岡で活躍した染色工芸家・芹沢銈介の弟子であり、昨年101歳で亡くなられた型染の大家である。切り絵や版画や絵本も手掛け、100歳を過ぎても仕事を続けておられた。私はNHKの日曜美術館という番組で柚木さんを初めて知った。番組では柚木さんに魅せられた少年との手紙のやりとりが紹介されていた。「ワクワクする気持ちがずーっと広がっていけばいいんだ」という柚木さんの言葉が印象に残った。
会場には天井から吊るされた型染の布が数多く展示されていた。「まゆ玉のうた」という岩手県立美術館所蔵の型染だけは写真撮影可となっていて、来場者が次々とスマホで写真を撮っていた。また、和紙を型染したポスター類も展示されていた。「つきよのおんがくかい」「ぎったんこ ばったんこ」「トコとグーグーとキキ」といった絵本の原画が展示されたコーナーにはその絵本が置かれていて、読むことができるようになっていた。宮沢賢治の作品を扱っている岩手の光原社との関係も深く、「注文の多い料理店」絵葉書の原画、光原社のための包装紙・レターセット・マッチ箱などのデザイン案があった。光原社の及川氏宛ての絵葉書には鮮やかな水彩で季節の果物が描かれていて目を引いた。いつまでも少年のような「純な心」を持ち続けて仕事をしてきた方なのだろうなと思った。
« 神経質礼賛 2386.あっ危ない | トップページ | 神経質礼賛 2388.御褒美アイス »


四分休符先生
柚木さんの作品、いいですね。とても魅力的です。
そして、死ぬまでワクワクしながら好きなことをやり続けられる人生も素敵です。
僕は、中年になって、民藝運動に興味をおぼえ、近頃は各地の窯元を訪ね歩き、生活の器を買っています。
それで気がついてみれば、それらの窯元は、全部、柳宗悦とバーナード・リーチと縁のあるところなのでした。
柚木さんもまた柳に影響を受けた一人。
柚木さんも柳の思想に出会わなければ、あの素朴で可愛らしい作品群は生まれなかったかもしれません。
岡本太郎が、それまで美術品としてほとんど評価されなかった縄文の土器や土偶に美を見出したのと同様に、民衆の生活の中に深い美を発見し、河井寛次郎や濱田庄司、棟方志功、芹沢銈介をはじめとする多くの作り手たちに影響を与えた柳宗悦の功績は極めて大きいと思います。
森田先生も「よく観ろ」とおっしゃっていたと思いますが、岡本も柳も、きっと「純な心」でものを「よく観る」ことを大切にしていたのでしょう。だからこそ、シャープに対象の本質に迫ることができたのだと推察します。
なんか、柚木さんについてじゃなくて、柳宗悦の宣伝みたいな文章になっちゃいました。ごめんなさい。
追記
先週から京都の京セラ美術館で開催されている『民藝誕生100年』展も楽しみです(残念ながら今回は柚木さんの作品は展示されていないようですが)。
投稿: kunu | 2025年9月19日 (金) 21時48分
kunu 様
コメントいただきありがとうございます。
仰るように柳宗悦の生活に根差した民藝は数多くの芸術家たちに影響を与えているかと思います。私も10年ほど前、京都の河井寛次郎記念館を見学して大変感銘を受けました(1206話)。「暮らしが仕事、仕事が暮らし」、それは実生活に根差した森田療法とも重なるように思います。
投稿: 四分休符 | 2025年9月20日 (土) 06時42分