神経質礼賛 2400.神経質は長寿の素
神経質性格の人は「生の欲望」が人一倍強く、「死の恐怖」に怯えやすい。心配性であるから病気にならないように用心するし、ケガをしないように無謀なことは避ける。だから、弱いように見えても意外と長寿、ということになりやすいように思う。また、前話で認知症恐怖の人の話を書いたが、神経質は頭をよく使うから、そうでない人よりは比較的呆けにくいということにもなりそうだ。森田療法関係者でもちょっと考えただけで百歳前後まで活躍された方々のお名前が思い浮かぶ。高良武久(1899-1996)、鈴木知準(1909-2007)、井上常七(1909-2010)、河原宗次郎(1901-2002)【いずれも敬称略】。
戦の世にピリオドを打った徳川家康(1542-1616)が天下を取れたのも、無謀な戦は控え神経質性格を生かして自分で煎じた八味地黄丸などの漢方薬を飲んで他の有力武将よりも長生きできたおかげであると考えられる(拙著p.231-235)。『養生訓』で有名な江戸時代の本草学者(今で言えば薬学者)・儒学者の貝原益軒(1630-1714)は生まれつき病弱であり、いかに体の養生をして長寿を全うするかというテーマをライフワークにしていた(605話・拙著p.235-237)。当時としてはかなりの長寿であり、晩年も健康で妻と旅行を楽しんでいたという。
森田正馬先生は体の病気ばかりでなく精神病になったり自殺に至ったりする可能性が低いことを述べておられる。
ともかくも、神経質の人は精神病にならず、自殺に至らず、自暴自棄・放縦・ズボラにならない。真面目・忠実で・忍耐力が強い。しかしまだ治らない人は、物に拘泥し・鋳型にはまり・ヒネクレて・自我中心的で、機転が利かず・仕事が間に合わないが、これが全治すると、打って変わって、非常に能率があがるようになる。なかなか面白い事です。
そのほかの気質の人には、さまざまの長所があるけれども、神経質のように、安心という訳には行かない。(白揚社:森田正馬全集 第5巻 p.573)
神経質という優れた資質に恵まれたのであれば、それを生かして活躍し、長寿を全うしたいものである。


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