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2025年10月30日 (木)

神経質礼賛 2400.神経質は長寿の素

 神経質性格の人は「生の欲望」が人一倍強く、「死の恐怖」に怯えやすい。心配性であるから病気にならないように用心するし、ケガをしないように無謀なことは避ける。だから、弱いように見えても意外と長寿、ということになりやすいように思う。また、前話で認知症恐怖の人の話を書いたが、神経質は頭をよく使うから、そうでない人よりは比較的呆けにくいということにもなりそうだ。森田療法関係者でもちょっと考えただけで百歳前後まで活躍された方々のお名前が思い浮かぶ。高良武久(1899-1996)、鈴木知準(1909-2007)、井上常七(1909-2010)、河原宗次郎(1901-2002)【いずれも敬称略】。

   戦の世にピリオドを打った徳川家康(1542-1616)が天下を取れたのも、無謀な戦は控え神経質性格を生かして自分で煎じた八味地黄丸などの漢方薬を飲んで他の有力武将よりも長生きできたおかげであると考えられる(拙著p.231-235)。『養生訓』で有名な江戸時代の本草学者(今で言えば薬学者)・儒学者の貝原益軒(1630-1714)は生まれつき病弱であり、いかに体の養生をして長寿を全うするかというテーマをライフワークにしていた(605話・拙著p.235-237)。当時としてはかなりの長寿であり、晩年も健康で妻と旅行を楽しんでいたという。

   森田正馬先生は体の病気ばかりでなく精神病になったり自殺に至ったりする可能性が低いことを述べておられる。

   ともかくも、神経質の人は精神病にならず、自殺に至らず、自暴自棄・放縦・ズボラにならない。真面目・忠実で・忍耐力が強い。しかしまだ治らない人は、物に拘泥し・鋳型にはまり・ヒネクレて・自我中心的で、機転が利かず・仕事が間に合わないが、これが全治すると、打って変わって、非常に能率があがるようになる。なかなか面白い事です。
 そのほかの気質の人には、さまざまの長所があるけれども、神経質のように、安心という訳には行かない。(白揚社:森田正馬全集 第5巻 p.573)

 神経質という優れた資質に恵まれたのであれば、それを生かして活躍し、長寿を全うしたいものである。

 

2025年10月26日 (日)

神経質礼賛 2399.認知症恐怖

 私と同じ年齢の男性が初診で来られた。妻から認知症ではないかと言われて心配になっているそうである。少々緊張気味で、元々人と話をするのは苦手だという。物忘れの自覚はある。二年前に仕事を退職して家にいるが、妻からいろいろ言われても覚えていられなくて妻からは叱責されている。一通り問診をした後で、念のため長谷川式スケールを行ってみると30点満点の30点。一度見せた5つの物品を隠して何があったか言ってもらうのも即答できた。少なくとも現時点では認知症ではありませんから御安心ください、と告げた。認知症ではなく認知症恐怖というわけである。老年期になれば物忘れは誰でも起きる。かくいう私も「あれ、ここに何しに来たんだっけ?」と思い出せなかったり、物をいつもと違う場所にちょっと置いたことを忘れて失くしたのではないかと焦ったりすることがある。認知症ではないかと心配するうちは認知症ではない。本物の認知症ではそういう心配はしなくなる。

 夫が定年退職になって家にいる時間が増えると妻との関係がうまくいかなくなる例はよくある。嘱託で仕事を続けたり、別のアルバイトをしたり、趣味があって出掛けていればまだいいが、家でゴロゴロしていると妻の目は厳しい。主婦には休日はなくやらなければならない家事はいくらでもある。夫と立場逆転である。勢い、妻からのお小言も多くなる。夫からすれば、またうるさいことを言っているな、と思って聞き流しているから頭に入っておらず、「この前言ったでしょ!」「いつも言ってるじゃないの!」ということが多くなるのだ。今回の方には、なるべく用事をみつけて外出することをお勧めしておいた。さらに簡単なアルバイトを探せばお小遣いも入って一石二鳥である。

 

2025年10月23日 (木)

神経質礼賛 2398.ホームカミングデー

 最初に卒業した大学からホームカミングデーの通知があって日曜日に行ってきた。卒後5年もしくは10年ごとに通知が送られてくる。今回は卒後45年。前回、10年前に初めて参加した。その時は残念ながらかつての学友に会うことはできなかったが、応援団による校歌や応援歌はとても懐かしかった。朝6時発の高速バスに乗り、新宿へ向かう。南口から入った新宿駅は学生時代の時よりもホームが増えて複雑怪奇。山手線ホームはどこだろうとウロウロ。高田馬場に行き、早稲田通りを歩く。10年ぶりに歩く早稲田通り、こんなにアップダウンがあったかなと思う。歩く速度も遅くなり体力低下を痛感する。かつて多かった古書店は減り、ラーメン屋が増えている。映画館の早稲田松竹は健在だった。早稲田通り側に穴八幡神社の立派な鳥居ができていて驚く。会場の戸山キャンパスへ行くと、かつて行事がよく行われた記念会堂という体育館はなくなり早稲田アリーナという新しい建物になっていた。記念式典の開始30分前には席に着いた。応援歌「紺碧の空」の演奏で始まる。司会はNHKの高瀬耕造アナ。今回は7年後に創立150周年を迎えるため、力が入っていて、総長や副総長の式辞は寄付をお願いする旨の話が多かった。TVゲーム・ドラゴンクエスト開発者の堀井雄二氏のインタビューがあった。最後は全員起立して校歌斉唱。少し涙腺が緩んだ。会場を出た後は大学本部へ向かい、會津八一記念博物館の展示を見る。仙厓さんや白隠さんの禅画も所蔵しているはずだが、今回はそれらの展示はなく、ちょっと残念だった。本部キャンパスは学園祭の最中だった。かつての政治的な立て看板がびっしり並び猥雑だった感じはなくなり、校舎の多くは建て替えられて綺麗になりお洒落な感じになっていた。今の学生さんは首都圏出身者が多くなりリッチになっていると聞くが、反骨精神・ハングリー精神は失わないで欲しいと思う。10年前と同じで雨が降り始める。

 この大学に入学した頃、自分は敗残者・人生の落伍者だというという意識が強かった。アパートとは名ばかりの古倉庫のような建物の三畳一間で貧乏生活をしていたからなおさらだった。松本零士の漫画「男おいどん」の主人公のようなものである。少しずつその意識は薄らいでいったが、4年生の時に父親が重大な病気で倒れて、不本意なUターン就職を選択した。やっぱり自分にはツキがないしダメ人間だなあ、と思いながら仕方なしに生きてきた。それでも何とか道が開けたのは、よりよく生きようとする神経質性格による粘りのおかげだと思っている。

 

2025年10月19日 (日)

神経質礼賛 2397.Windows10サポート終了

 この10月14日でWindows10のサポートが終了した。家電量販店のチラシではWindows11搭載パソコンへの買替を勧めていたが、かつてのWindows98・XP・Vista・7・8・10への切り替え時ほどには騒ぎは起きていない。ニュースの話題にもなっていないようである。切り替えにコストがかかるため、法人使用のパソコンでは切り替えの動きは鈍いという。もちろん、サポートが切れたからと言ってもすぐに使えなくなるわけではないから、もうしばらく使ってから買い替えようという人もいるだろう。また、今までも切り替え時に救済措置が行われ、しばらくは事実上、更新サービスを延長していたからそれを期待する人もいるかもしれない。今回も個人ユーザの場合、種々の条件を満たせば1年間は更新ソフトが提供されるようである。ソフトの更新が行われないとなるとウイルス感染の危険性が高まる。ウイルスチェックソフトが入っていても、古いWindowsの脆弱性を狙ってくるウイルスに対しては効果を発揮しきれない。最近のウイルスはランサムウェア(身代金要求型)と呼ばれる悪質なものが増えている。アサヒビールが攻撃されて現在も業務に支障をきたしている例をみれば、被害の甚大さは明白である。個人であっても用心するに越したことはない。知らないうちにウイルスの発信源にされてしまう可能性もあるのだ。

 私の場合、以前は家に1台、職場に1台ノートパソコンを保有していて、新しいパソコンを買うと家用にして古いものを職場用にシフトしていた。今は仕事が常勤ではないので、職場にはパソコンは置けない。かつての職場用は家でサブ機としている。家用はすでにWindows11のものになっているので、古いサブ機だけを買い替えることにした。かつては型落ち機ならばNECや富士通のものが5~6万円で購入できたが最近は安いメーカーの物でも10万円近くするようになっている。しかも予約してから入荷まで2週間近くかかる。処分するパソコンを初期化してデータを消去してから店に回収を依頼した。しっかりデータ消去しておかないと、個人情報漏洩のおそれがある。ここは神経質にしっかりやっておく必要がある。そうだ、処分するパソコンがもう1台あったことを思い出す。義父が使っていたWindows8のノートパソコンだ。これまた初期化の方法をネットで確認して実行。富士通の製品で無料PCリサイクル対象品なので送付伝票を請求。その伝票を貼って郵便局に持ち込み、ゆうパックで発送した。これでしばらくは安心である。

 

2025年10月16日 (木)

神経質礼賛 2396.ファニー・メンデルスゾーン

 メンデルスゾーンの姉ファニー(1805-1847)について調べようと手持ちのクラシック音楽作品名辞典(三省堂)を開いてみる。弟フェリックス・メンデルスゾーン(1809-1847)の前に少しだけ記事があるが、曲名はピアノ曲1曲と歌曲6曲しかなく、ピアノ三重奏曲は載っていなかった。歌曲は弟の作品として出版され、その中の「イタリア」という曲は当時イギリスのヴィクトリア女王の愛唱歌になったという。ファニーは優れたピアニストで作曲の才能にも恵まれていたが、当時、音楽の世界も男社会であって女性が作曲家になることは難しかった。モーツァルトの姉ナンネルが優れた音楽的才能を持ちながら作曲家として世に出られなかった例もある。また、身分社会だった当時、音楽家は貴族や知識人とより下の職人階級とみなされていたし、メンデルソゾーン家のような上流階級の女性が職に就くことははしたないことだとされていた。公的な音楽活動を父親から禁じられたファニーは弟の曲を批評したり助言したりして弟を支えた。宮廷画家ヴィルヘルム・ヘンゼルと結婚し、ファニー・ヘンゼルとなってから、理解のある夫の勧めで音楽活動を始める。ピアニストとして活躍し弟のピアノ協奏曲第1番の初演を行い、自作の曲を出版するようにもなる。ところが、弟の作品のリハーサル中に脳卒中で倒れ、亡くなってしまう。これは弟フェリックスに大きなショックを与えた。弟も同じように脳卒中をきたして同じ年に亡くなっている。今回演奏されたピアノ三重奏曲はファニーの死後に弟が校訂して出版された。作曲した作品数は600曲とも言われる。今後、埋もれている名曲が日の目を見ることを望みたい。

2025年10月13日 (月)

神経質礼賛 2395.秘密クラブ?

 一週間前、勤務している精神科クリニックの院長先生からサロンコンサートのお誘いのメールが入った。この院長先生は三島森田病院では数年間一緒に働いたことがある。いわゆる雇われ院長であり、他の精神科クリニックの院長T先生が理事長で実質的な経営者である。T先生はピアノを弾く人で、年に数回、少人数でのサロンコンサートを企画・開催している。急な話だが、予定が空いていたのと、会場が家から近いので行くことにした。曲目はメンデルスゾーンのピアノ三重奏曲3曲。

 会場は普段前を歩いて通っているビルの上階。1階は美容院で上の階はマンションになっている。まさかそんな所にホールがあるとは知らなかった。私は初めてで勝手がわからないので、開場時刻の18:30少し前に院長先生とマンション入口で待ち合わせして、インターホンのボタンを押すが返事がない。他の来場者も来たので、もう一度ボタンを押すと繋がり、エレベータに乗るよう促された。まるで妖しげな秘密クラブに入っていくみたいである。その階でエレベータの扉が開くと、入口ドアもなくいきなり玄関だった。小さなテーブルがあり、そこの椅子に座っている高齢の婦人が受付担当のようだが、まだ会場準備ができていない様子で、次々と来場者が来てしまって、狭い玄関は一杯になる。受付担当らしき婦人は横のドアを開けて出たがそこは非常口だった。オートロックになっていて戻れなくなり、ドアをドンドン叩く。院長先生が内側からドアを開けて事なきを得た。ようやく会場準備ができてスリッパに履き替えて入室する。軽いスタック椅子が30人分ほど並べられていて、舞台はなく、普通のフローリング床で、前方にグランドピアノとヴァイオリニストとチェリストの席と譜面台が並んでいる。グランドピアノは小ぶりで、横の方にもう1台あるから2台ピアノの演奏もできるようになっている。

 今回の演奏者は東京芸大の同期生で学生時代からアンサンブルを組んでいた人たちで、40歳位の中堅といった感じだ。それぞれ音大の教員やオーケストラ奏者などをしながら平行してアンサンブル活動をしている。息の合ったすばらしい演奏だった。それを至近距離で直に聴くので、大迫力だった。曲目はメンデルスゾーン作曲のピアノ三重奏曲3曲と書いたが、最初の曲は実はメンデルスゾーンの姉の作品で初めて聴く曲だった。これも素晴らしい曲で、姉がどんな人物だったのか知りたくなった。アンコールはメンデルスゾーン作曲「歌の翼に」だった。このピアノ三重奏版はヴァイオリンとチェロが主旋律と対旋律を交互に弾くようになっていて、とても美しかった。このメンバーは2日後にも東京文化会館で同じプログラムの公演を行うという。今回の聴衆はたった20人程度。実に贅沢な時を過ごさせてもらった。

 

2025年10月12日 (日)

神経質礼賛 2394.車内アナウンス

 先月の終わりから朝の通勤電車で車内アナウンスにアニメ声が加わって驚いた。普段のアナウンスに加えて「次は○○ですっ!」「危ないんで、ドアから手を離して待ってて下さいねーっ!」といった元気のいい声が流れ、何度も聞いていると耳について少々疲れてくる。どうやら実際のアニメの声優さんたちを起用しているようだ。電車から降りてアニメキャラクターたちが描かれたラッピング電車だと知った。別の日にバスに乗ったら、それに関するチラシがあって、「静鉄にヒロアカが来た!」と書かれている。登場人物らしい若者たちが運転士の制服を着て並んでいるイラストが描かれている。「僕のヒーローアカデミア」というアニメとのコラボ企画のイベントやグッズ販売が行われていて、チラシのQRコードにスマホを当てるとそうしたページが開くようになっていた。私は最近のアニメは全く知らないので冷ややかな対応になってしまったが、アニメを見ている若い人だったらとても喜ぶだろうな、と思う。

   2両編成ワンマン運転のローカル鉄道であり、車内アナウンスには沿線のお店などの宣伝も入っている。病院やクリニック、私立高校、専門学校、神社、不動産屋、住宅設備業者、補聴器屋、蕎麦屋、パン屋、豆腐屋、たこ焼き屋、美容院、ボーリング場など、実に多岐にわたる。上智大学への推薦枠がある私立高校は、「△△△△から上智大学へ、上智大学から世界へ」などと吹聴している。実際のところ何人が上智大に入れるのだろうか、とツッコミを入れたくなる。次の停車駅の紹介は日本語と英語で流れ、ドア上の電光掲示にもしっかり表示されるから十分わかる。そこにアニメアナウンスが加わるとしつこく感じる。もう少し整理できないかと思ってしまう。

 

2025年10月 9日 (木)

神経質礼賛 2393.幸せの青い鳥はどこに

 相変わらず、職場のストレスをきっかけに休み始めて精神科を受診する人は少なくない。軽度のうつ状態を呈している人もいて、少量の薬を服用してもらい、1~2か月休むと治って復職する人もいれば、症状が軽減してもなかなか仕事に行こうとしないでグズグズしている人もいる。特に若い人によくみられるのは、「もともとやりたい仕事じゃなかった」「本当は自分に合った仕事があるはず」「自分は何のために生きているかわからない」などと言って自己分析しては「思想の矛盾」にはまり込んでいくタイプである。そして「かくあるべし」という理想と「かくある」という現実とのギャップに苦しむ。こうなると神経症である。そんな理想の職場や理想の家庭があろうはずはない。SNSでリッチな幸せそうな人たちの生活を見て羨ましく思い、劣等感にさいなまれ、自分もうまくすればそうなるはずだと思い込む。しかし、SNSに流される情報はいい所だけを切り貼りしたものであり、そうした人たちも実生活では種々の問題を抱え、不安を持ちながら生きているのだ、ということに気付かない。いろいろ嫌なことがあり、平凡でつまらなく感じる日常生活の中に、幸せの青い鳥はいるのだ。森田正馬先生は次のように述べておられる。

 「自分は何故に生存するか、如何に生きれば人生を最もよく完ふする事が出来るか」といふ事は、古今の詩人哲学者の考へ悩んだ事であり、小生も少年時から長い半生を苦しんだ事です。しかしそれは「自分は」といふ主観のみに閉ぢこもる時に、全く論理のたゝぬ矛盾に墜るといふ事に氣がつかない。之は実は不可能の努力であるといふ事は、自分の心で自分の心を見やうとする事で、自分の眼で自分の眼を見やうとすると同様です。
 禅では之を「一波を以て一波を消さんと欲す。千波萬波交々(こもごも)起る」といつて心の葛藤の益々激しくなる事にたとへてあります。(白揚社:森田正馬全集 第4巻 p.582)

 日常生活に目を向ければやらなければならないことはいくらでもある。それを一つ一つこなしていくうちにいろいろな工夫や楽しみにも気付くようになる。理屈はさておき体を動かして小さな仕事に手を出してみることだ。ちょっと立ち位置が変わるとまた別の景色が見えてくるものだ。

 

2025年10月 5日 (日)

神経質礼賛 2392.コイルトレイン

 いつもピアノ伴奏してくれている友人から変わったLINE連絡が入った。銅線が絡んでしまったとのことで写真付きである。銅線の束が絡んでしまっている。何に使うのかと尋ねるとコイルトレインを作ろうとしているとのこと。友人の本職は高校の物理教師なので、教材にしようということらしい。

   はて、コイルトレインって何なんだろうかとネット検索してみると、実際の製作例の動画がいくつも公開されていた。単3か単4の乾電池の両電極に強力なネオジム磁石を取り付け、コイル状に巻いた銅線あるいは錫メッキ線の中に入れると勢いよく進んでいく。コイルの両端をリング状に繋げてその中をぐるぐる回る動画もあった。これはフレミングの法則の応用である。中学校の理科でフレミング左手の法則・右手の法則を学ばれたと思う。左手の法則は左手の親指・人差し指・中指がそれぞれ直角になるようにすると、人差し指方向に磁界があり中指方向に電流が流れた時には親指方向に磁力が発生する、というものだ。理科のテストの際、左手を出して問題を解いた記憶もおありではなかろうか。乾電池の電極からコイルに電流が流れると磁力で電池があたかも列車のように進んで行くのだ。リニアモーターカーの実験である。

   翌日、またLINE連絡が入り、今度は5秒間の動画付き。コイルの中を走り抜ける乾電池の様子が映っている。生徒たちの歓声も聞こえる。大成功だね、と返すと、「生徒がやると成功、自分がやると失敗。いつもそうです」と。

 この実験に使う材料は百円ショップやホームセンターで買い集めれば千円から二千円位である。コイルを巻くのに1~2時間ほどかかるかららしい。下手をすると銅線がよじれたり絡まったりするから神経質を要する。しかし、実際に電池が勢いよく動く様子を見たら強烈に頭に焼き付いて、生きた勉強になることだろう。物理学というと数式ばかりで敬遠する人も多いだろうが、こういう工夫があると勉強のモチベーションが上がりそうだ。

2025年10月 2日 (木)

神経質礼賛 2391.鍵盤ハーモニカのピッチ

 友人の音楽仲間グループで楽器店の内輪のコンサートに出ることになり、エレクトーン、ヴァイオリン×2、コントラバス、鍵盤ハーモニカというメンバーで「レット・イット・ゴー」と「トレロカモミロ」を練習してきた。最近のピアノはA442Hzに調律されていることが多く、長年440Hz派だった私も442Hzで調弦している。はて、鍵盤ハーモニカのピッチはどうなのだろうか、と気になる。神戸の楽器店が4種類の鍵盤ハーモニカのピッチを実測した動画を公開していたので見てみた。ヤマハのピアニカは少し高い443Hzだった。個体差ではないかという。スズキのメロディオンは442Hz、日本製のゼンオンのピアニーは442Hz、中国製のキョーリツのメロディピアノは443Hzと高かった。ピッチが異なると同じ音を一緒に出しているつもりでもうなりを生じて音が濁る。メンバーの人が使っている鍵盤ハーモニカは以前はドイツ製だったが、現在はスズキのメロディオンだと聞く。やはり鍵盤ハーモニカと合奏する時も442Hzに調弦していれば間違いないようだ。

 さて、演奏当日、エレクトーン奏者の薬剤師さんの強い押しで、上下黒色服、百円ショップで買った麦藁帽子に水色のスカーフという揃いのいで立ちで登場。当日も早くから行って、練習室をレンタルして練習を繰り返す。本番はあっと言う間だった。「学芸会」が終わってほっとする。これからは私にとって普通の音楽に戻れる。

 

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