神経質礼賛 2416.体験発表
医療サイトでは製薬会社が自社の製品の解説をする動画を公開している。最近、抗うつ薬の動画の中に元バレーボール日本代表としてオリンピックにも出場したことのある大山加奈さんがかつて現役選手時代にうつになって治療を受けて回復した体験を語っておられているものがあった。抑うつ気分、不眠、動悸、めまいなどの症状に悩まされたが、なかなか家族や友人やチームに相談できなかった。心配をかけたくないということだけでなく、自分が弱いことを認めてしまうと代表選手に選んでもらえなくなってしまうのではないかという思いもあったという。多くのトップアスリートたちの診療にあたっているナショナルトレーニングセンターの医師から「同じ症状で悩んでいるアスリートはたくさんいるよ」と言われて救われ、薬で症状はだんだんよくなっていったという。自分と同じような悩みを持っている人の助けになれば、という気持ちから御自分の体験を発表されたのだと思う。
森田療法では体験発表の場がある。浜松医大や三島森田病院では退院間近の入院患者さんが茶話会の場で体験発表を行っていた。症状が出て苦しんでから森田療法を受け、症状はあっても行動していく生活習慣が身に付くにつれ、薄皮を剝がすように症状自体も気にならなくなっていく。総まとめをしておくことで、もし症状が再発したとしても入院中のことを思い出して自分で治していけるという効用もある。また、治療を受けている他の人たちにとっても、自分だけが苦しいと思っていたけれど、あの人も苦しんでいたんだなということが理解できるし、良くなっていくお手本が示されるというわけである。犠牲心(1200話)について書いたことがあるが、そこでも紹介した森田正馬先生の話を再掲しておこう。
既に治った人は、その喜びとともに、同病相憐れむの情から自分の症状を告白・発表して、他の人の参考にもし、同病を治したいという情が切になってくる。これがすなわち懺悔の情にもなれば、犠牲心ともなるのである。これと反対に、まだ治らない人も、自分で努めて懺悔し、犠牲心を出せば、これが治る機会となるのであります。(白揚社:森田正馬全集 第5巻 p.124)
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