神経質礼賛 2448.機が熟せば治る
うつ病で長く仕事を休職している人を引き継いだ。抗うつ剤、抗不安薬、睡眠薬が処方されてきたが、なかなかよくならず、傷病手当金意見書も同じ文章を書かざるを得ない。診察時はいつも暗い表情で種々の身体的な不調を訴え、何もやる気が起こらない、とひきこもりがちの生活を送っていた。薬が多すぎるようにも思われて、少し整理していった。緊急避難的措置である「うつは休め」モードが続いていて、神経症化しているようにも考えられた。毎回、日常生活で小さいことでもいいから何か楽しめることを探していきましょう、と繰り返し話した。そして『ソフト森田療法』をお貸しして、50ページまででいいから読んでみて下さい、と告げた。そこまで読めば、不安、不眠、気分の落ち込み、意欲低下、体調不良への森田療法的アプローチが詰まっている。特にそれについての感想はなかったが、それから1か月経ち、2か月経ったあたりから表情が明るくなってきた。そして少しずつ家事に手を出すようになっていった。小さな行動が「呼び水効果」となって健康的な部分が引き出されていったようだ。その後はアドバイスに従って図書館へ行く出勤訓練を自主的にするようになり、産業医の先生との面談の際に自ら復職希望を告げ、正式に復職訓練スケジュールをこなし、ついに復職が決まった。
森田の言葉に砕啄同時(啐啄同時)がある(440話)。雛鳥が孵化する時、親鳥が殻をついばむのと雛鳥が殻を破ろうとする行動が同時に起きるという喩えを言う。解決を求めて焦っても道は開けない(求不可得、求めて得べからず:750話)。この例では機が熟して治っていったが、なかなかこううまくいくとは限らない。本人が殻から出たいという気にならず頑なに殻に籠っていては、いつまで経っても機が熟さないし、殻をつついても効果はないのである。
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