神経質礼賛 2480.漸進でよい
外来通院中の患者さんで森田療法的アプローチが役に立ちそうな方には拙著『ソフト森田療法』を、さらにコアな神経質で読書好きな方には『神経質礼賛』を進呈している。強迫症状が重度で日常生活に大きな支障をきたしている人がいる。不潔恐怖のため入浴に時間がかかり過ぎ、結局月に一度になってしまっている。外出も思うにまかせず、家族が家事や買物などを代わりにしている。前の主治医の時代から抗うつ薬、抗不安薬が多剤処方され続けているがあまり効果がみられていない。一般的に言って、強迫症状を薬だけで解決するのは困難である。他のタイプの神経症に比べると強迫は「悪い癖」という色彩が強く、自分で我慢して普通の人と同じように行動しようとしないことには改善が難しい(978・1208・2438・2439話)。この人にも『ソフト森田療法』を差し上げて、あなたに役立つ話が書いてありますよ、と告げた。
それから3か月経って、「自分にピッタリ当てはまります。本に書いてある通りだと思いました」と礼を言われた。本には数多くの付箋紙が張ってあり、細かい字でいろいろな書き込みがされていた。理屈はわかってもなかなか行動に移せないのが強迫の人である。わかっちゃいるけどやめられない、である。「少しずつだけど家のことをやるようにしています」とも言われる。そう、苦しくても少しでも健康人らしく行動していくのが森田式である。一気に前進できなくていい。三歩進んで二歩下がるでもいい。それを繰り返せば少しずつ進んで行く。漸進でいいのだ。年月はかかってもそれを続けて行けば、いつしかその積み重ねが成果として現れてくる。見える景色も少しずつ変わってくるのだ。


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