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2026年7月16日 (木)

神経質礼賛 2486.ここに泉あり

 105歳のピアニスト室井摩耶子さんの訃報記事を新聞で読んだ。ピアノ雑誌「月刊ショパン」に原稿を書き続けてこられ、今月号に最後の記事が掲載されるというから驚嘆に値する。まさに生涯現役を貫かれたのだ。室井さんは映画「ここに泉あり」に作曲家で指揮者の山田耕筰とともに特別出演されていたと知り、YouTubeで映画を見てみた。

 映画「ここに泉あり」は1955年の作品。創始期の群馬交響楽団の実話を基にしている。主演の岸恵子は音楽学校を卒業したばかりのピアニストでただ一人の女性団員役。山田耕筰の東京フィルと合同演奏をすることになる。山田の指揮でソリストは室井摩耶子さん。チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番を演奏していた。室井さんの演奏はすばらしく、迫力満点だ。それを目の当たりにして団員たちは演奏レベルの差を思い知らされる。オーケストラといっても仕事は小学校での演奏や療養所の慰問くらいで収入はほとんどなく給料は未払い。管楽器の団員はチンドン屋のアルバイトをし、夜になるとヤケ酒を煽っては喧嘩し、楽器はしばしば質屋に行ってしまうような有様。見切りをつけて次々と団員が辞めて行く。経済的なメドが立たず、ピアノもなくなり、練習場所も追われ、楽団を解散することになるが、最後に山奥の分校から依頼された演奏会をやってからにしようという話になる。メンバーたちは楽器や荷物を抱えて山道を歩いて行く。分校の子供たちの前でオーケストラの楽器紹介をするが、木管楽器奏者たちは辞めてしまっていて不在である。子供たちは熱心に聞き入る。何曲か演奏して最後は「赤とんぼ」を演奏し子供たちにも歌ってもらう。山道を歩いて去っていく楽団員に大勢の子供たちが遠くから手を振る。感動的な場面である。しかしその直後、自宅を抵当に入れ私財を投げ打って楽団を支え、この日も病を押して参加していたマネージャーがついに倒れる。これで万事休すか。それから数年後、山田耕筰は軽井沢に向かう列車の中で「次は高崎です」という車掌の案内を聞いて、「あそこにあった楽団は今どうしているの?」と言い出す。隣席の東京フィルのマネージャーから「潰れたって話を聞きました」と言われるが、高崎で途中下車して練習所に立ち寄ってみる。すると、グリーグのピアノ協奏曲を練習している最中で、山田は飛び入りで指揮を始める。ようやく県から補助金が出るようになって、団員も増え、演奏レベルも大幅に向上していた。東京フィルとまた合同演奏会をすることになり、山田の指揮でベートーヴェンの交響曲第9番を演奏する場面で映画は完結している。室井さんの新聞記事が縁となって、すばらしい映画を見ることができた。室井さんに感謝である。

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